犬の尿漏れの原因は?老犬・避妊後に多い理由と病気、自宅でできる対策を解説

愛犬が寝ている間に尿を漏らすようになった、歩いている途中におしっこがポタポタ落ちるようになった――そんな変化があると、「年のせいかな?」と心配になる飼い主さんも多いのではないでしょうか。
犬の尿漏れには、加齢だけでなく、避妊後に起こる尿道の機能低下、膀胱炎や尿石症、神経の病気、糖尿病など、さまざまな原因があります。
特にシニア犬では「もう年だから仕方ない」と思ってしまいがちですが、治療できる病気が隠れていることもあるため、年齢だけで判断しないことが大切です。
この記事では、犬の尿漏れと「おもらし」「頻尿」の違い、主な原因、動物病院を受診する目安、自宅でできるケアまで分かりやすく解説します。また、漢方では犬の尿漏れをどのように考えるのかについても、漢方専門の薬剤師の視点から紹介します。
1. 犬の尿漏れとは?おもらし・頻尿との違い
犬が自分の意思とは関係なく尿を漏らしてしまう状態を「尿漏れ」または「尿失禁」といいます。
見分けるうえで大切なのは、犬が自分でおしっこをしようとしているのか、それとも気づかないうちに尿が漏れているのかという点です。
飼い主さんが自宅で確認するときは、「どこでおしっこをしたか」よりも、「どのように尿が出たか」を観察してみましょう。
例えば、
- 寝ていた場所が濡れているのに犬自身は気にしていない
- 歩いている途中に尿がポタポタ落ちる
- おしっこの姿勢を取っていないのに床が濡れている
といった場合は、犬が気づかないうちに尿が漏れている可能性があります。
一方、自分からしゃがんだり足を上げたりして、トイレではない場所でおしっこをした場合は、典型的な尿失禁とは異なります。
頻尿との違い
頻尿とは、尿が勝手に漏れるのではなく、おしっこをする回数が増えている状態です。
散歩中に何度もおしっこをする、何度もトイレに行く、何度もしゃがむのに少ししか出ないといった様子が見られます。膀胱炎や尿石症などでも、このような症状が現れることがあります。
多尿との違い
「多尿」は、頻尿とは意味が異なります。
頻尿は「おしっこの回数が多い」、多尿は「1日に出る尿の量そのものが多い」状態です。
糖尿病や腎臓の病気、クッシング症候群などで尿量が増えると、今までと同じ時間ではおしっこを我慢できず、家の中でしてしまうことがあります。
飼い主さんには尿漏れのように見えることがありますが、無意識に尿が漏れる尿失禁とは原因が異なります。
おしっこのトラブル時に確認したいこと
愛犬のおしっこのトラブルに気づいたら、
- おしっこの姿勢を取っていたか
- 寝ている間に漏れていなかったか
- 1日の排尿回数
- 1回の尿量が以前より増えたか、減ったか
- 水を飲む量が増えていないか
を確認しましょう。
尿漏れ以外の変化も観察しておくと、動物病院で原因を調べる際の重要な手がかりになります。
2. 犬の尿漏れを引き起こす主な原因5選
犬の尿漏れにはさまざまな原因があります。「年だから仕方ない」と決めつけず、背景にある原因を考えることが大切です。
加齢に伴う排尿機能の低下
シニア期に入ると、膀胱や尿道、おしっこをためたり出したりするための筋肉や神経の働きが低下し、尿漏れが起こりやすくなることがあります。
同じ時期に、後ろ足が弱くなる、立ち上がるのに時間がかかる、活動量が減るといった変化が見られることもあります。
ただし、「高齢だから尿が漏れる」とは限りません。
尿道の機能低下や膀胱炎、神経の病気などが隠れていることもあるため、「年のせい」と決めつけないことが大切です。
避妊手術後にみられる尿道括約筋機能不全
避妊手術を受けたメス犬では、「尿道括約筋機能不全(USMI)」による尿失禁がみられることがあります。
尿道括約筋とは、尿が勝手に出ないように尿の出口を閉じている筋肉です。この働きが弱くなると、犬自身の意思とは関係なく尿が漏れることがあります。
特徴の一つが、寝ている時やリラックスしている時に尿が漏れることです。一方、起きている時には普段どおりトイレで排尿できる犬もいます。
避妊手術を受けたメス犬で寝ている間の尿漏れが見られる場合は、動物病院で相談してみましょう。
膀胱炎・尿石症などの泌尿器疾患
膀胱炎や尿石症などでも、尿漏れのように見える症状が起こることがあります。
この場合は、無意識に漏れる「尿失禁」より、
- 何度もトイレに行く
- 少量ずつしか出ない
- 血尿が出る
- 排尿時に痛そうにする
- 尿の色や臭いが変わる
といった症状が見られることがあります。
特に、何度もおしっこの姿勢を取るのに尿がほとんど、または全く出ない場合は注意が必要です。尿の通り道が詰まっている可能性もあるため、早めに動物病院を受診してください。
神経障害による排尿コントロールの低下
椎間板ヘルニアなどで脊髄や神経が障害されると、膀胱や尿道をうまくコントロールできなくなることがあります。
この場合、尿漏れと一緒に、
- 後ろ足がふらつく
- 歩き方が変わった
- 足に力が入りにくい
- 尾の動きがおかしい
- 排便にも変化がある
といった症状が現れることがあります。
シニア犬では足腰の変化も「年のせい」と考えてしまいがちですが、尿漏れと歩き方の変化が同じ時期に起きた場合は注意しましょう。
糖尿病やクッシング症候群などの病気
糖尿病やクッシング症候群などによって「多尿」が起こり、尿漏れのように見えることがあります。
尿量そのものが増えるため、これまでと同じ間隔では我慢できず、トイレまで間に合わなくなるためです。
この場合、特に確認したいのが水を飲む量が以前より増えていないかという点です。
水をたくさん飲んで尿量が増える「多飲多尿」のほか、食欲や体重の変化、お腹が膨らんで見える、皮膚や被毛の状態が変わるといった症状が現れることもあります。
なお、子犬や若い犬で、幼い頃から尿がポタポタ漏れている場合には、「異所性尿管」など生まれつきの尿路の異常が隠れていることもあります。
尿漏れと一緒に起きている変化も見る
尿漏れの原因を考えるうえで重要なのは、尿漏れだけを見ないことです。
寝ている時に漏れるのか、何度もトイレに行くのか、足腰も弱くなったのか、水をよく飲むようになったのか。
こうした変化の組み合わせが、原因を考える大きな手がかりになります。
3. 犬の尿漏れを漢方ではどう考える?
漢方では、尿漏れという症状だけを見るのではなく、その犬の体全体にどのような変化が起きているのかを考えます。
漢方でいう「腎」は腎臓だけではない
東洋医学における「腎(じん)」は、現代医学の腎臓そのものとは少し意味が異なります。
排尿や水分代謝だけでなく、成長、発育、生殖、老化、骨や足腰などに関係する働きも含めて「腎」と考えます。
そのため、シニア犬で尿漏れと同時に、
- 後ろ足が弱くなった
- 立ち上がるのに時間がかかる
- 散歩できる距離が短くなった
- 寒がるようになった
- 元気や活動量が落ちた
といった変化が見られる場合、漢方では別々の問題として見るだけでなく、加齢による「腎」の衰えが関係する一連の変化として考えることがあります。
尿漏れと足腰の衰えを「腎虚」という視点から考える
漢方には、「腎は骨を主る」「腎は排尿に関わる」という考え方があります。
尿漏れと足腰の衰えは一見すると別々の問題ですが、漢方では同じ「腎」の働きの低下が背景にある可能性を考えます。
このように「腎」の働きが衰えた状態を「腎虚(じんきょ)」と呼びます。
尿漏れだけでなく、足腰、活動量、冷えなども含め、体全体を見ながらケアを考えるのが漢方の特徴です。
ただし、尿漏れ=すべて腎虚ではない
尿漏れがある犬すべてを「腎虚」と考えるわけではありません。
例えば、冷えが強い、薄く透明な尿が多い、寒い時期に悪化する、元気がないといった場合は、「腎陽」の不足という視点から考えることがあります。
一方、
- 何度もおしっこをする
- 尿の色が濃い
- 尿の臭いが強い
- 排尿時に違和感がある
といった場合には、膀胱周辺の「湿熱(しつねつ)」という状態を考えることもあります。
漢方では、体にたまった余分な水分を「湿」、炎症などに関連する状態を「熱」と考えます。この2つが組み合わさった状態が「湿熱」です。
さらに、ストレスや緊張、食欲、便の状態なども含めて、その犬の体全体を見ていきます。
タイプによって漢方的なケアも変わる
漢方では、「尿漏れ」という症状名だけでケアの方法を決めるわけではありません。
寝ている間などの無意識な尿漏れが中心であれば、尿を保持する力が低下しているという視点から考えます。当薬局では、東洋医学でいう「腎」や足腰に着目し、シニア犬の排尿に関する健康維持を目的として「もれピタサプリ」を設計しています。
尿漏れだけでなく、足腰の衰えや活動量の低下なども見られる場合には、「腎虚」という全身的な変化を考え、「イキイキサプリ」のようにシニア期の体全体を支えるケアも選択肢になります。
一方、頻尿や尿の色・臭いの変化などがある場合には、「湿熱」という考え方に着目した「ドロとけサプリ」のようなケアを検討することもあります。
ただし、頻尿、血尿、排尿時の痛みなどがある場合は、サプリメントだけで様子を見ず、まず動物病院で原因を調べることが大切です。
西洋医学では「なぜ尿が漏れているのか」を調べ、漢方では「その犬の体全体がどのような状態なのか」を見る。
どちらか一方ではなく、それぞれの視点を活用してケアを考えていきます。
4. 犬の尿漏れで動物病院を受診する目安と検査・治療
犬の尿漏れは、すべてのケースが緊急というわけではありません。しかし、治療が必要な病気が隠れていることもあります。
すぐに動物病院へ相談したい症状
特に注意したいのは、何度もおしっこの姿勢を取っているのに、尿がほとんど、または全く出ない場合です。
尿の通り道が詰まっている可能性があるため、早急な受診が必要です。
また、
- 血尿が出ている
- 排尿時に強く痛がる
- 急に後ろ足が動かなくなった
- 立てなくなった
- 元気や食欲が大きく低下した
- 嘔吐など全身の症状がある
といった場合も、早めに動物病院を受診してください。
尿漏れと一緒に水を飲む量や尿量が増えている場合も、糖尿病などが隠れている可能性があるため、相談することをおすすめします。
受診前に記録しておきたいこと
獣医師に伝えたいのは、「いつ・どのように尿が漏れているのか」です。
寝ている時なのか、起き上がった時なのか、歩いている途中なのかなど、具体的なタイミングを記録しておきましょう。
可能であれば、排尿時や尿が漏れている時の様子をスマートフォンで動画に残しておくと、状況を伝えやすくなります。
さらに、
- 1日の飲水量
- 排尿回数
- 後ろ足のふらつき
- 食欲や体重の変化
- 避妊・去勢手術の有無
- 現在服用している薬
なども重要な情報です。
動物病院で行われる検査
尿漏れの原因を調べるため、尿検査、血液検査、レントゲンや超音波検査(エコー)などが行われることがあります。
尿検査では膀胱炎や尿石症などを考える手がかりを調べ、血液検査では腎臓や肝臓、血糖値など全身の状態を確認します。
画像検査では、膀胱や腎臓、尿石などを確認します。神経の異常が疑われる場合には、神経学的な検査やMRIなど、さらに詳しい検査が必要になることもあります。
原因によって治療方法は異なる
尿道括約筋機能不全では尿道を閉じる働きを助ける薬、細菌性膀胱炎では必要に応じて抗菌薬が使われることがあります。
尿石症では尿石の種類や状態によって食事療法や薬、手術などが検討されます。
神経の病気や糖尿病などが原因の場合は、尿漏れだけではなく、その原因となっている病気を治療・管理することが重要です。
5. 自宅でできる犬の尿漏れ対策とケアのコツ
動物病院で原因を確認すると同時に、自宅でも愛犬が快適に過ごせる環境を整えてあげましょう。
尿焼けを防ぐ
尿漏れが続くと、陰部周辺の被毛や皮膚が濡れた状態になり、「尿焼け」と呼ばれる皮膚トラブルにつながることがあります。
大切なのは、尿で濡れた状態を長時間放置しないことです。
尿に気づいたら、強くこすらずやさしく清潔にし、水分を拭き取って乾燥させましょう。
赤み、ただれ、強い臭いなどがある場合は、動物病院に相談してください。
おむつは濡れたままにしない
犬用おむつは便利ですが、尿を吸収したまま長時間つけていると、皮膚が尿や湿気にさらされます。
こまめに確認し、濡れたり汚れたりしたら交換しましょう。交換する際には、皮膚に赤みやただれがないかも確認してください。
トイレへ行きやすい環境を作る
シニア犬では、尿意を感じてからトイレへ移動すること自体が負担になることがあります。
- 寝床の近くにもトイレを置く
- 滑り止めマットを敷く
- 段差を減らす
- 寝起きや食後にトイレへ誘導する
などの工夫をしてみましょう。
「おしっこを我慢させる」のではなく、おしっこをしやすい環境を作ってあげることが大切です。
6. 老犬の尿漏れは「年齢のせい」と諦めないことが大切
シニア犬に尿漏れが起こると、「もう年だから仕方ない」と思ってしまうかもしれません。
しかし、年齢は尿漏れの背景の一つであって、すべての原因ではありません。
避妊後の尿道括約筋機能不全、膀胱炎や尿石症、神経の病気、糖尿病など、治療や管理が必要な病気が隠れていることもあります。
また、明らかな病気が見つからなかった場合でも、トイレへ行きやすい環境を整える、皮膚を清潔に保つ、足腰や体全体の健康を支えるといったケアができます。
漢方では、尿漏れと足腰の衰え、活動量の低下、冷えなどを一緒に見ながら、「腎虚」など体全体の変化として考えることがあります。
「尿漏れ=老化だから仕方ない」ではなく、「尿漏れは愛犬の体からのサイン」と考えることが大切です。
わんぽうやく相談はこちら
わんぽうやく相談をする →7. まとめ
犬の尿漏れには、加齢だけでなく、避妊後の尿道括約筋機能不全、膀胱炎や尿石症、神経の病気、糖尿病など、さまざまな原因があります。
まず確認したいのは、犬自身がおしっこをしようとしているのか、それとも寝ている時や歩いている時などに無意識に漏れているのかという点です。
尿漏れに気づいたら、「年だから仕方ない」と自己判断せず、動物病院で原因を確認しましょう。
そのうえで、尿焼けを防ぐための衛生管理、おむつの交換、トイレへ行きやすい環境づくりなどを行います。
また漢方では、尿漏れだけでなく、足腰の衰え、活動量、冷え、食欲なども含めて体全体の状態を考えます。
西洋医学で原因を確認しながら、必要に応じて漢方的な体質ケアを取り入れることで、愛犬の健康をさまざまな方向から支えていくことができます。
尿漏れは、愛犬の体からのサインの一つです。そのサインを見逃さず、原因を確認し、その犬に合った治療やケアを選んであげましょう。
ご不明な点や、愛犬の体質に合った和漢サプリ「わんぽうやく」についてのご相談がありましたら、お気軽にお問い合わせください。
わんぽうやく相談はこちら
わんぽうやく相談をする →
【監修者プロフィール】
株式会社ヘルシーライフ
代表取締役 赤尾 征樹(薬剤師)
創業明治42年、100年以上続く老舗「赤尾漢方薬局」4代目として、約20年にわたり漢方相談に携わる。長年培った漢方理論に基づき、一人ひとりの体質や症状に合わせた漢方相談を行っている。
シェア: