犬の分離不安症とは?治し方・予防策を漢方の視点から薬剤師が解説

愛犬が少しでも飼い主さんの姿が見えなくなると落ち着かない、外出するとずっと吠えている、帰宅すると部屋の中が荒れている。このような様子がある場合、「分離不安症」が関係しているかもしれません。

犬の分離不安症は、単なるわがままや、しつけ不足とは限りません。飼い主さんと離れることに強い不安や恐怖を感じ、心や体にさまざまな変化が起こっている状態です。

引っ越しや家族構成の変化、飼い主さんの仕事が忙しくなったなど、生活環境が変わったことをきっかけに症状が現れることもあります。

この記事では、犬の分離不安症の症状や原因、治し方、自宅でできる対策についてわかりやすく解説します。

さらに、漢方では犬の不安や興奮をどのように考えるのか、「肝(かん)」や「肝熱(かんねつ)」という考え方についても、漢方専門の薬剤師の視点からご紹介します。

1. 犬の分離不安症とは?

犬の分離不安症とは、信頼している飼い主さんや家族と離れることで、強い不安や恐怖を感じてしまう状態です。

犬はもともと群れで生活する動物なので、一人で過ごすことがあまり得意ではありません。

しかし、分離不安症になると、ただ寂しがるだけではありません。

飼い主さんが外出する準備を始めただけで落ち着かなくなったり、留守番中にずっと吠えたり、物を壊したりすることがあります。

なかには、下痢や嘔吐、食欲不振など、体調にまで影響が出る犬もいます。

大切なのは、こうした行動を「困った癖」「わがまま」と決めつけないことです。

犬自身も強い不安を感じている可能性があるため、原因を知り、少しずつ安心できる環境を作ってあげることが必要です。

2. 犬の分離不安症でみられる症状

分離不安症では、飼い主さんが家を出る前後や、留守番中にさまざまな症状がみられます。

特に、飼い主さんが外出してから30分以内など、早い時間から症状が出ることがあります。

留守番中の様子は飼い主さんからは見えないため、ペットカメラなどを使って確認すると分かりやすくなります。

留守番中にみられやすい行動

留守番中に不安を感じている犬
  • 大きな声で吠え続ける
  • 遠吠えをする
  • ドアや窓を引っかく
  • ケージやクレートから出ようとする
  • ソファーや家具、靴などを壊す
  • 部屋の中をウロウロ歩き続ける
  • 外に出ようとして脱走を試みる
  • 普段はできるトイレを失敗する

体に現れる変化

精神的なストレスが強くなると、行動だけではなく体にも変化が現れることがあります。

  • 下痢をする
  • 嘔吐する
  • 食欲が低下する
  • よだれが増える
  • ハァハァと激しく呼吸する
  • 前足やしっぽを何度も舐める
  • 同じ場所を噛み続ける
  • 必要以上に体を舐める

特に、同じ場所を繰り返し舐め続けると、皮膚炎や脱毛につながることもあります。

外出前後にみられる変化

飼い主さんが出かける前から不安を感じる犬もいます。

例えば、

  • 飼い主さんが服を着替えるとソワソワする
  • バッグを持つと落ち着かなくなる
  • 車の鍵を持つだけで吠える
  • 家の中でも飼い主さんの後をずっとついてくる
  • 帰宅すると異常なくらい興奮する

などです。

こうした行動が毎回のようにみられる場合は、分離不安症の可能性を考えてみてもよいでしょう。

3. 犬が分離不安症になる主な原因

犬が分離不安症になる原因は一つではありません。

性格や育ってきた環境、生活の変化、年齢など、いくつもの原因が重なって起こることがあります。

生活環境の変化

引っ越しや家族構成の変化、飼い主さんの勤務時間の変化などは、犬にとって大きなストレスになります。

今まで家族と長時間一緒に過ごしていた犬が、急に一人で留守番する時間が増えることで不安が強くなることもあります。

過去の怖い経験

保護犬などでは、過去に捨てられた経験や、長時間一人で過ごした経験が影響していることもあります。

また、雷や工事の音など、留守番中に怖い経験をしたことがきっかけになる場合もあります。

飼い主さんへの強い依存

いつも飼い主さんと一緒に過ごし、一人になる経験がほとんどない場合、離れることへの不安が強くなりやすいことがあります。

普段から短い時間でも一人で落ち着いて過ごす練習をすることが大切です。

加齢や認知機能の低下

高齢になると、不安を感じやすくなる犬もいます。

今まで問題なく留守番できていた犬が、急に吠えたり落ち着かなくなった場合は、認知機能の低下や体の不調が隠れていないか確認する必要があります。

性格や体質

もともと怖がり、神経質、興奮しやすい犬では、環境の変化に敏感に反応することがあります。

このような犬では、日頃から安心して過ごせる環境を整えることが特に大切です。

4. 漢方では犬の分離不安をどう考える?

漢方には「心身一如(しんしんいちにょ)」という考え方があります。

これは、心と体は別々のものではなく、お互いに影響し合っているという考え方です。

そのため、犬の分離不安についても、単に性格や行動だけを見るのではなく、体の状態も一緒に考えていきます。

特に、漢方では不安や興奮、神経質な状態には「肝(かん)」が関係していると考えます。

漢方でいう「肝」とは?

漢方でいう「肝」は、現代医学でいう肝臓だけを意味するものではありません。

漢方では、肝には体の中の「気」をスムーズに巡らせ、気持ちや自律神経のバランスを保つ働きがあると考えます。

ところが、強いストレスや緊張が続くと、気の流れが悪くなります。

すると、

  • 落ち着きがなくなる
  • 興奮しやすくなる
  • 神経質になる
  • 少しの音にも反応する
  • 怒りっぽくなる
  • 飼い主さんと離れることを強く嫌がる

といった変化が現れることがあります。

「肝熱」が強くなると興奮しやすくなる

ストレスが強くなり、肝の働きが乱れると、漢方では「肝熱」という状態になることがあります。

簡単にいうと、ストレスによって体の中に余分な熱がこもり、興奮しやすくなった状態です。

肝熱が強くなると、

  • 吠え続ける
  • じっとしていられない
  • 眠りが浅い
  • 興奮しやすい
  • イライラしやすい
  • 物音などに敏感になる

といった症状がみられることがあります。

また、漢方では肝と胃腸の働きは関係していると考えます。

そのため、ストレスがかかると下痢をしたり、食欲が落ちたり、うんちの状態が変化したりする犬もいます。

人でも緊張するとお腹が痛くなることがありますが、犬でも同じように、心の状態が胃腸に現れることがあります。

小型犬と「小肝症」

周囲を気にして警戒している小型犬

当店では特に小型犬の相談で、神経質、興奮しやすい、落ち着きがない、ストレスに弱いという相談を多く受けます。

こうした体質を考えるうえで、当店では「小肝症」という考え方にも注目しています。

小型犬は体が小さいため、肝臓も小さく、食事やストレスなどの影響が体調や行動に現れやすい犬もいます。

そのため、分離不安のケアでは、不安な気持ちだけを見るのではなく、体の状態を整え、ストレスに対して過敏に反応しにくい状態を作ることも大切だと考えています。

ただし、すべての分離不安症が肝熱や小肝症によって起こるわけではありません。

生活環境や過去の経験、体調、年齢など、さまざまな原因が関係しているため、犬の状態を総合的に考えることが重要です。

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5. 犬の分離不安症の治療

「もしかして分離不安症かもしれない」と思った場合は、まず動物病院に相談することをおすすめします。

動物病院で相談する

分離不安症に見えても、体の病気や認知機能の低下などが関係している場合があります。

留守番中の動画を撮影しておくと、獣医師が症状を確認するための参考になります。

症状が強い場合には、行動療法とあわせて、不安を和らげるための薬が使われることもあります。

薬だけで治すのではなく、生活環境や犬との接し方を一緒に見直していくことが大切です。

ドッグトレーナーに相談する

分離不安症では、犬の行動を少しずつ変えていくトレーニングも重要です。

専門のドッグトレーナーに相談すると、その犬の性格や生活環境に合わせた方法を教えてもらえます。

分離不安症は「しつけができていない」という問題ではありません。

不安を感じにくい状態を少しずつ作っていくことが大切です。

6. 自宅でできる分離不安症の対策

分離不安症の改善には時間がかかることがあります。

急に長時間留守番させるのではなく、犬が不安を感じない範囲から少しずつ練習しましょう。

外出の合図に慣らす

犬は、飼い主さんがコートを着る、バッグを持つ、鍵を持つなどの行動から「これから一人になる」と覚えていることがあります。

そこで、外出しないときにも鍵を持ったり、バッグを持ったりしてみます。

「鍵を持ったからといって、必ず留守番になるわけではない」と覚えてもらうことで、不安を減らしていきます。

短い時間から一人になる練習をする

まずは飼い主さんが別の部屋に行き、数十秒から数分程度離れてみます。

落ち着いて待てるようになったら、少しずつ時間を延ばしていきます。

長時間我慢させてから戻るのではなく、不安になる前に戻ることが大切です。

安心できる場所を作る

安心できる場所で落ち着いて過ごしている犬

ケージやクレートを「閉じ込められる場所」にするのではなく、「安心して眠れる場所」にしてあげましょう。

普段からおやつを与えたり、お気に入りの毛布やおもちゃを置いたりして、落ち着ける場所として慣らしておきます。

運動や遊びを取り入れる

散歩や遊びで体を動かすことも大切です。

適度に運動すると、留守番中に眠りやすくなります。

また、フードを入れられる知育おもちゃなどを使い、一人でも楽しめる時間を作るのもおすすめです。

帰宅時に興奮させすぎない

帰宅したときに飼い主さんが大げさに喜ぶと、「飼い主さんが帰ってくること」が特別な出来事になりすぎることがあります。

帰宅してすぐに大興奮で触れ合うのではなく、犬が少し落ち着いてから声をかけるようにしてみましょう。

7. 子犬の頃からの社会化も大切

分離不安症の予防には、子犬の頃からさまざまな経験をさせることも大切です。

これを「社会化」といいます。

人や犬、車の音、外の環境など、いろいろな刺激に少しずつ慣れることで、初めて経験することに対して過度に怖がりにくくなります。

また、飼い主さんと一緒に過ごす時間だけでなく、一人で休む時間を作ることも大切です。

「一人で過ごしていても大丈夫」という経験を少しずつ増やしていきましょう。

8. 漢方の考え方から生まれた「ニコニコサプリ」

ここまでご説明したように、漢方では不安や興奮、神経質な状態には「肝」の働きが関係していると考えます。

そこで当店では、分離不安や過緊張、神経質で落ち着きのないワンちゃんの毎日の健康管理として、犬用和漢サプリ「ニコニコサプリ」を開発しました。

赤尾漢方薬局は1909年、明治42年創業の漢方薬専門店です。

これまで培ってきた漢方相談の経験をもとに、4代目の漢方専門薬剤師が犬の体質や悩みを考えて作ったのが「わんぽうやく」シリーズです。

ニコニコサプリには、肝の働きを助け、気の巡りを整えることを考えて、綿茵蔯(めんいんちん)や山梔子(さんしし)を配合しています。

また、穏やかな毎日をサポートする牡蛎(ぼれい)や珍珠母(ちんじゅぼ)、胃腸の健康を考えた大棗(たいそう)、生姜(しょうが)、蜜炙甘草(みっしゃかんぞう)などの和漢素材も組み合わせています。

単に興奮だけを見るのではなく、漢方の「心身一如」という考え方をもとに、心と体の両方から健康を支えることを目指した配合です。

わんぽうやくに使用しているのは、和漢素材と鹿肉ブレンドの場合は鹿肉のみです。

添加物は使用していません。

使い方は1日2回、付属のスプーンでいつものご飯にかけるだけです。

「食べてくれるか心配」という方もいらっしゃいますが、アンケートでは、80%の方から「問題なく食べられた」という回答をいただいています。

また、和漢素材だけでは食べにくい犬のために、香りのよい丹波産鹿肉を使用した鹿肉ブレンドもご用意しています。

犬の不安や興奮が気になる場合の毎日の健康管理としてお役立てください。

※サプリメントは栄養補助食品であり、病気の治療を目的とするものではありません。

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9. 犬の分離不安症についてよくある質問

Q1. 犬の分離不安症は治りますか?

症状の程度によりますが、生活環境の見直しやトレーニングを続けることで改善する犬はいます。

ただし、短期間で急に治そうとすると、かえって不安が強くなることがあります。

犬が安心できる範囲から、少しずつ練習することが大切です。

Q2. 分離不安症の犬を叱ってもよいですか?

留守番中に部屋を荒らしたり、粗相をしていたとしても、帰宅後に叱ることはおすすめできません。

犬は強い不安から行動している可能性があります。

叱ることで、さらに不安が強くなる場合もあります。

Q3. 高齢犬でも分離不安症になりますか?

高齢になってから急に不安が強くなることもあります。

ただし、認知機能の低下や痛み、体の病気などが関係していることもあるため、今まで問題なく留守番できていた犬に急な変化がみられた場合は、一度動物病院に相談しましょう。

Q4. 漢方だけで分離不安症を治せますか?

分離不安症は、生活環境や犬の性格、過去の経験など、さまざまな原因が関係します。

そのため、漢方やサプリメントだけに頼るのではなく、生活環境の改善やトレーニング、必要に応じて動物病院での治療を組み合わせることが大切です。

漢方は、犬の体質やストレスの受けやすさを考えながら、毎日の健康管理を支える方法の一つとして活用するとよいでしょう。

10. まとめ

犬の分離不安症は、飼い主さんと離れることに強い不安や恐怖を感じることで起こります。

留守番中の吠えや破壊行動、粗相などは、わがままではなく、不安のサインかもしれません。

改善するためには、急に長時間留守番させるのではなく、短い時間から一人で過ごす練習を行い、安心できる環境を作ってあげることが大切です。

また、漢方では、不安や興奮、神経質な状態には「肝」や「肝熱」が関係することがあると考えます。

行動だけを見るのではなく、胃腸の状態や体質、ストレスの受けやすさなど、心と体を一緒に考えることも大切です。

「うちの子は分離不安症かもしれない」「どのようなケアをすればいいのかわからない」「ニコニコサプリが合うか知りたい」という場合は、お気軽にご相談ください。

赤尾漢方薬局では、創業明治42年以来の漢方相談の経験を活かし、漢方専門の薬剤師がワンちゃんの体質や現在の様子をお伺いしながら、一頭一頭に合わせた健康管理をご提案しています。

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赤尾 征樹

【監修者プロフィール】

株式会社ヘルシーライフ

代表取締役 赤尾 征樹(薬剤師)

創業明治42年、100年以上続く老舗「赤尾漢方薬局」4代目として、約20年にわたり漢方相談に携わる。長年培った漢方理論に基づき、一人ひとりの体質や症状に合わせた漢方相談を行っている。