梅雨型熱中症に注意!原因や対策、夏バテを防ぐ正しい養生法とは?

じっとりとした蒸し暑い毎日。なんとなく体が重だるいと感じることはありませんか?

多くの方が「熱中症は真夏の炎天下に起こるもの」というイメージを持っています。しかし近年、本格的な夏になる前の気温がまだ上がりきっていない日にも熱中症を発症してしまう、「梅雨型熱中症」が注目されています。

本記事では、漢方薬剤師の視点から、梅雨型熱中症の原因や症状、そして梅雨~夏を乗り切るための具体的な養生や対策について解説します。今年の夏を健やかに過ごすために、意識することから始めましょう。

近年影響の増す、梅雨型熱中症とは?

高い湿度が「汗の蒸発」を妨げ、体内に熱がこもる

先月のYahooニュースによると、‘‘総務省消防庁の統計では、昨年5~9月までの熱中症救急搬送人員の累計は10万人を超え過去最多”となったと伝えています。一方、“エアコンを所有している20~60代の555人に調査を実施したところ、全体の78%が「例年、熱中症対策をしている」と回答したものの、対策の開始時期は「7月以降」という人が35%。梅雨型熱中症については、聞いたことがない、内容までは分からないという人が82%にのぼった ”と報告されています。

私たちの体は、「汗をかく」ことで体温調節をおこなっています。夏に道に打ち水をして涼むように、体は体温が上がると汗を出して、汗の蒸発によって体表を冷やします。しかし、梅雨の時期は大気中の湿度が非常に高く、汗が蒸発しにくくなります。汗をかいても湿度で熱が体にとじこめられてしまうため、体が重だるくなり気力や胃腸の働きも落ちてしまいます。

そうなると、水分をとってもベタっとした気持ち悪い汗をかくだけで熱はこもり、ますます気力と潤いが失われて食欲も低下してしまう…。単なる暑さでもなく、単なる水分不足でもなく、「湿度が熱をとじこめる」。これが「梅雨型熱中症」の特徴です。

出典:梅雨型熱中症に気をつけよう 節電意識した対策法は?

体が暑さに慣れていない6〜7月が最も危険な時期

真夏型の熱中症が「暑さによる体内の潤い喪失」を原因とするのに対し、梅雨型熱中症は「湿度により熱が体内にこもることで体全体の機能が低下する」ということがポイントになります。

とくに、梅雨から梅雨明けにかけての時期(6〜7月)は、体がまだ暑さに慣れていない時期です。通常であれば、夏になるにつれて体は発汗機能を高め、湿度や暑さに順応していきますが、この時期はまだその準備ができていません。

そのため、体が暑さに慣ないうちに高い湿度にさらされることで、体温調節機能が追いつかなくなりやすく、気温が30度に届かない日でも湿度が高ければ熱中症を発症してしまう可能性があります。

特に風の弱い日はさらに熱が逃げにくくなり、室内でも換気が不十分な環境では熱や湿気がこもりやすくなります。普段から汗を上手くかけない方・運動習慣のない方・室内にこもりがちな方・高齢者の方は特にリスクが高まります。

こんな症状に注意!梅雨型熱中症の初期サインを見逃すな

梅雨型熱中症では、以下のような症状が起こりやすいです。初期の段階で気づき、適切に対処することが重要です。

梅雨型熱中症の主な症状

  • 重だるさ・倦怠感:何となく体が重い、休んでも疲れが取れない
  • 芯の熱っぽさ:体の芯が熱っぽい、湿度が高い所や暑い場所にいると辛い
  • 胃腸症状:胃がポチャポチャする、胃もたれ、消化不良、腹痛、下痢
  • 吐き気・食欲不振:胃腸の調子が悪くなり食欲が低下する、吐き気
  • 気持ち悪い汗:べたついて、シャワーで流したいような汗が続く
  • その他:頭痛、頭重感、めまい、立ちくらみ、むくみ、尿量の低下

こうした症状は「まだ夏バテには早いし、少し疲れているだけ」と、体調不良の原因が梅雨型熱中症だと気づかないまま悪化することがあります。

「消化器症状」にも要注意

真夏の熱中症と比べて、梅雨型は胃腸症状(吐き気・食欲不振・胃の重さ)を伴いやすいのが特徴です。これは、高い湿度が体内の水分バランスを乱し、胃腸の機能を低下させやすいためです。

漢方では「脾は湿を悪(にく)む」といって、胃腸は湿度に弱い臓器と昔から言われています。梅雨は空気中の湿度が高まり、体内にも余分な水分が停滞しやすくなるため、湿邪によって胃腸が上手く働けず疲労してしまうのです。

胃腸は血液循環を調整する自律神経の要でもあり、胃腸の不調は血液循環の低下やうっ血を起こしやすくなるため、アトピー性皮膚炎や頭痛・肩こり、腰痛、アレルギー性鼻炎などの皮膚炎も悪化することがあります。

水分を補給しても体調が回復しない、むしろ飲むと胃が重くなる、食欲が最近低下して疲れやすいという状態は、梅雨型熱中症の可能性を意識することが大切です。症状が重い場合(強い倦怠感、めまいや頭痛・吐き気など)は、速やかに医療機関を受診してください。

発症しやすい環境をチェック!室内でも安心できない

以下のような環境は、梅雨型熱中症が発症しやすい状態です。ご自身の生活環境が、以下のような状態になっていないかチェックしてみてください。

室内環境のチェックポイント

  • 室温:28度以上
  • 湿度:70%以上
  • 換気:窓を締め切ったまま換気していない
  • エアコン:使用していない、または設定温度が高い

梅雨時期は外の気温がそれほど高くなくても、室内は湿気がこもりやすく、室温・湿度ともに上昇しやすい環境になります。特に締め切った部屋は熱と湿気がたまりやすく危険です。

最近の住宅は気密性が高く、換気が不十分になりがちです。「室内にいれば安全」という思い込みを持たず、室内でも熱中症は起こりやすいという意識を持ちましょう。

温湿度計を室内に置き、室温・湿度をこまめにチェックする習慣をつけることをおすすめします。

対策①:適切な水分補給とエアコン・除湿を

水分補給は「こまめに・少量ずつ」を基本に

熱中症対策として水分補給が重要なのは間違いありませんが、梅雨型熱中症では「水の飲みすぎ」が逆効果になるケースがあります。

梅雨時期は体内の水分が真夏ほど一気に失われるわけではない一方、大量の冷たい水をグビグビと一度に取ると胃腸に負担がかかり、消化機能を低下させます。のどの渇きを感じたときに、少量ずつこまめに水分を摂ることが基本です。

水分補給の目安

  • ちびちびと、ゆっくりと飲む
  • 冷たい水よりも常温か温かいものを選ぶ
  • 胃腸を疲れさせる砂糖の入ったもの、炭酸を摂りすぎない

もちろん、脱水が進んでいる状態では、しっかりと水分と塩分を補給することが必要です。のどの渇きを感じにくくなっている高齢者の方は、意識的にこまめな水分補給を行いましょう。

エアコンと除湿機で湿度・室温を適切に管理

エアコンは温度設定だけでなく、除湿機能(ドライ機能)を活用することがポイントです。梅雨型熱中症の大きな原因は「高い湿度」にあるため、室温だけを下げても湿度が高いままでは体温調節がうまくいきません。室温25〜28℃、湿度50〜60%湿度の目安に設定しましょう。

また、1〜2時間に1回は窓を開けて換気し、室内に湿気がこもらないよう工夫することも大切です。エアコンと換気を組み合わせることで、より快適で安全な室内環境を保つことができます。

対策②:胃腸を疲れさせない

梅雨型熱中症を防ぐためには、漢方的な視点からの養生が非常に役立ちます。

漢方の考えでは、「胃腸の疲れ」は全身の水分代謝に大きく影響すると考えます。胃腸の機能を守ることが、梅雨型熱中症を予防するための要です。

<胃腸を守る食養生>

① 冷たいものを控える

暑い時期は冷たい飲み物やアイスを多く摂りがちですが、冷たいものは胃腸の血行を悪化させ、消化機能を低下させます。できるだけ常温か温かい飲み物・食事を選び、胃腸を冷やしすぎないようにしましょう。梅雨の時期から意識するだけで、真夏の夏バテや胃腸カゼも予防できます。

② 腹八分目・食べすぎない・極端な食事制限もさける

夏は胃腸の消化吸収機能が低下しやすい時期です。食欲があっても腹八分目を意識し、ゆっくりよく噛んで食べることで、胃腸への負担を最小限にできます。また、食事を抜くなど極端な食事制限も胃腸の筋肉を疲れさせます。少量でも、規則正しく食べるようにしましょう。

③ バランスの良い食事をしっかり摂る

水分だけでお腹を満たさず、タンパク質・炭水化物・ビタミン・ミネラルをバランスよく摂ることが重要です。夏バテは「胃腸の疲労による消化・吸収力の低下」が本質であるため、胃腸が栄養をしっかり吸収できる状態を保つことが体力維持の鍵になります。

<良質な睡眠時間の確保>

日中の疲労回復には、質の良い睡眠が不可欠です。胃腸の疲労は、夜間の睡眠中にしか十分に回復することができません。自律神経の要でもある胃腸の働きを守るには、良質な睡眠は不可欠です。

<質の良い睡眠のための習慣>

  • 夜12時前には就寝する
  • 夕食から就寝まで3時間以上の間隔をあける
  • エアコンのタイマーを使い、就寝中に体を冷やしすぎない

夜間の気温がまだ低い梅雨の時期に、就寝中に窓を開けっ放しにしたり、エアコンで体を冷やしすぎると体の中まで冷えてしまい、翌朝のだるさや体調不良につながります。快適な室温を維持しながら、体を冷えから守ることが大切です。

<運動習慣で自律神経や汗腺をきたえる>

適度な運動習慣は発汗機能を高め、暑さへの耐性を養います。梅雨の時期から軽いウォーキングやストレッチを生活に取り入れて適度に汗をかくことで、湿度や暑さに上手く対応出来る体を作っていくことができます。

ただし、湿度が高い日の屋外での激しい運動は熱中症リスクが上がるため、室内でのトレーニングや早朝・夕方など涼しい時間帯の活動を選ぶようにしましょう。

これらの養生は、本格的な夏を迎える前のこの梅雨の時期から行うことで、急な温度や湿度の変化にも耐えられる抵抗力がつきます。

高齢者・自律神経が乱れやすい方は特に注意

高齢者の方は、元々の体内の水分量が低下し、体温調節機能が低下していることに加え、のどの渇きを感じにくくなっているため、気づかないうちに脱水が進んでしまう可能性があります。室内にいても熱中症を発症するリスクが高く、近年では高齢者の室内での熱中症が増加傾向にあります。

また、自律神経の普段から乱れやすい方や更年期の方も、発汗や体温調節が乱れやすく、梅雨型熱中症を発症しやすい傾向にあります。「なんとなく体調が悪い」「だるさが続く」「めまいがする」といった初期症状が普段の症状と重なりやすく、梅雨型熱中症と気づかないケースも少なくありません。

高齢者のいるご家庭でのチェックポイント

  • 室温・湿度をこまめに確認し、エアコンを使って温度や湿度を安定させる
  • 「暑くない」と言っていても、こまめに体の状態を確認する
  • 一定の間隔で、少しずつ常温か白湯を飲む習慣をつけるようにする
  • 体調不良のサインを見逃さず、早めに医療機関や薬剤師に相談する

漢方で早めの体質改善|迷ったときは、専門家に相談を

梅雨から夏にかけての時期は、体への影響が大きく出やすい季節です。特に普段から湿度や暑さに弱い方、胃腸の弱い方、自律神経が乱れやすい方、高齢者の方は、漢方薬で普段から胃腸や自律神経を整えることで、体質改善を通して梅雨型熱中症を予防できる場合が多くあります。

梅雨型熱中症はまだ知らない方も多く、「まだ暑さもそれほどではないし大丈夫」と様子を見ているうちに症状が悪化してしまうケースも少なくありません。

「病院に行くほどではないかな」と感じる初期の体調不良でも、お気軽にご相談ください。薬剤師が一人ひとりの体質や生活習慣・状態に合わせて、適切なアドバイスや漢方薬のご提案をさせていただきます。

正しい情報と養生法を知り、今年の夏も健康で、アクティブな毎日を過ごしましょう。

赤尾 征樹

【監修者プロフィール】

株式会社ヘルシーライフ

代表取締役 赤尾 征樹(薬剤師)

創業明治42年、100年以上続く老舗「赤尾漢方薬局」4代目として、約20年にわたり漢方相談に携わる。長年培った漢方理論に基づき、一人ひとりの体質や症状に合わせた漢方相談を行っている。